こんにちは、アップリメイクの齋藤直樹です。
ビルの外壁が色あせてきた、屋上の傷みが気になる。そう感じていても、営業中のテナントがあると、なかなか踏み切れませんよね。
費用のことに加えて、そもそも営業を続けながら工事を進められるのか、という点も心配になると思います。
ビルの工事は、外壁を何平方メートル塗るかだけでは決まりません。下地(したじ:塗料を塗る面そのもの)の補修や目地、屋上の防水、足場、出入口の使い方まで決める必要があるからです。
ビルの塗り替えは、表面を塗る工事と、傷んだ部分を直す工事を分け、建物の使い方に合う工程を組むことが基本です。
工事の範囲は建物ごとに違います。そのため、ビルの塗り替え費用は「何階建てだからいくら」と一律には決まりません。
同じ階数や延べ床面積でも、外壁の材料、補修の量、お隣との距離、営業の条件によって、見積もりの中身は変わってきます。
ここでは、ビルのオーナー様や管理のご担当者様に向けて、工事の範囲と費用の見方、時期の決め方、テナントとの調整を順にお話しします。
工場・倉庫・社屋・ビルなど、法人様の建物の工事については専用のページもご用意しています。工場・倉庫・社屋・ビルの塗装と防水(法人様向け)で、ご相談からご契約までの流れをご案内しています。
記事のポイント
- ビルの構造と外壁の仕上げを分けて見る理由
- 塗り替え・下地補修・防水で異なる工事範囲
- 面積や補修量、仮設の条件から費用を比べる方法
- 営業や暮らしへの影響を抑える工事の段取り
ビルの構造と仕上げを分けて考える
塗り替えの方法を選ぶとき、最初の一歩になるのは、「RC造」「鉄骨造」といった構造の呼び名と、実際に塗る面の材料を分けて考えることです。
そこに店舗、事務所、住まいといった使い方を重ねると、材料の選び方と工事中の制約が具体的に見えてきます。
RC造でも表面の材料は同じではない
RC造は鉄筋コンクリート造のことで、建物を支える柱や梁(はり)、壁などの骨組みを表す呼び名です。
一方、外から見える面は建物によってさまざまです。コンクリートがむき出しの場合もあれば、モルタルや塗膜(とまく:塗料が乾いてできる薄い膜)などで仕上げてある場合もあります。
鉄骨造でも、外壁がすべて同じパネルでできているとは限りません。階や面によって材料が違う建物もあります。
工事では、新しい塗料が触れるいちばん外側の仕上げと、その下で仕上げを支える材料の、両方を見ていきます。
たとえば、表面の古い塗膜が浮いていると、その上に合った塗料を塗っても、古い塗膜ごとはがれてしまうおそれがあります。
はがれかけたシールの上に新しいシールを貼っても、一緒にはがれてしまうのと同じです。
一方で、問題なく残せる塗膜もあります。全面を削り落とすか、傷んだ範囲だけを取り除くかは、くっつき具合と選ぶ仕様に合わせて決めます。
ALC(エーエルシー)パネルの外壁なら、パネル表面の仕上げに加えて、目地(めじ:板と板のつなぎ目)や窓まわりのつなぎ方も重要です。
ALCは、中に細かい気泡を含んだ軽いコンクリートの一種です。表面を守るだけでなく、つなぎ目の防水まで含めた手入れが欠かせません。
まずは現地で壁の材料と今の仕上げを確かめ、図面や前回の工事記録と照らし合わせます。材料選びは、そこから始まります。
店舗・事務所・住居で変わる条件
同じ外壁工事でも、建物の使い方によって、確保すべき通り道や作業できる時間は変わります。
店舗ならお客様が集中する出入口や商品の搬入、事務所なら勤務時間や機器の給気・排気、住まいなら毎日の出入りや洗濯などがかかわってきます。
一階に店舗、上の階に住まいがあるビルなら、お店の定休日だけで全体の日程を決めることはできません。
昼間も家にいる方がいることや、共用の階段を毎日使うことをふまえて、作業する区画と使える場所を決める必要があるからです。
管理のご担当者様は、テナントの営業時間に加えて、搬入の時間、使い続けたい設備、利用者の通り道を先にまとめておいてください。
それだけで、施工会社との打ち合わせがかなり進めやすくなります。
工事のために調整できる時間と、業務の都合でどうしても確保したい時間。
この二つを伝えていただければ、現地の条件に合う工事の順番や、一時的に使えなくする範囲を一緒に考えます。
掲載写真は、ビルとアパートなどの共同住宅の外壁・屋上・ベランダで行った施工の例で、現場は複数にわたります。
一つの建物の工程を順に追ったものではないため、各部位の作業を理解する参考として、それぞれの現場名と工程を添えています。
塗り替えと下地の補修を分ける
先に要点をお伝えすると、塗料は表面を守るための材料です。欠けた下地や、くっつきが切れた目地まで、塗るだけで直せるわけではありません。
そのため工事前の調査では、塗膜の傷みと、その下の材料やつなぎ目に起きている不具合を、分けて見ていきます。
粉化や剥がれと下地の傷みを見る
塗膜が粉っぽくなるチョーキング(触ると手に白い粉が付く現象)や色あせは、表面の変化を知る手がかりです。
塗り替えが必要かどうかは、こうした変化に加えて、塗膜のくっつき具合、下地の状態、雨水の影響などを調べて判断します。
ひびがある場合も、表面の塗膜だけのひびなのか、下地まで続いているのかで手当てが変わります。幅の数字だけで直し方は決まりません。
場所や広がり方、まわりの浮き、室内の雨染みなども、あわせて調べます。
外壁の一部がふくらんでいる、欠け落ちた跡がある。こうした場合は、触ったりたたいたりして確かめないでください。
管理側へ連絡したうえで、施工会社などに調査を頼んでいただくのが安心です。
特に上から物が落ちてきそうな場所では、真下を通らないようにしてください。管理側で、通り道の変更や立ち入りの制限を考えます。
ひびを全部同じ材料で埋めるのではなく、下地の動きや水の影響までふまえて工法を選ぶ。それが、塗装のあとにまた傷むのを防ぐために欠かせない考え方です。
鉄筋や金属部の修理を見落とさない
コンクリートの欠けた部分から鉄筋が見えている場合や、錆汁(さびじる:さびが溶け出した茶色い汚れ)が出ている場合は要注意です。
表面だけでなく、中の腐食も含めた調査が必要になります。
鉄筋の状態と腐食の有無を確かめ、まわりも含めて直す範囲を調べることで、工事の中身と量が決まります。
外壁の塗料を塗り重ねても、減ってしまった金属の厚みや、失われた留める力が元に戻るわけではありません。
手すりや金属の囲いも、表面のさびを落とせば塗装できる状態なのか、穴や留め具の傷みを先に直すべき状態なのかを見分けます。
次の写真は、外壁の金属の囲いに錆止めを塗った例です。

赤い錆止めを施工した外壁の金属製の囲い(静岡市葵区 アパートM)
壁の広い面と金属の部分とでは、下地処理も塗料も違います。見積書でも場所を分けてもらうと、何に対する費用なのかがつかみやすくなります。
構造や支えの部分への影響が疑われる場合は、外装の仕上げとは別に、必要な専門の調査や修理の範囲を決めてから工事を進めます。
目地の補修と塗装の役割を分ける
パネルの間や窓まわりのシーリングは、部材と部材の間のすき間を埋めるゴムのような材料です。
材料そのものが割れていたり、くっつけた面から離れていたりする所では、上から外壁用の塗料を塗っても、必要なくっつきは戻りません。
今の材料の状態、目地の幅や深さ、使う材料の改修仕様を確かめたうえで、取り除く範囲や、新しく詰める方法を決めます。

養生した縦目地からシーリングを撤去した状態(静岡市葵区 アパートM)
古い材料の撤去、くっつける面の処理、必要なプライマー(下塗り用の接着剤のような材料)、詰める作業。これらは表面の塗装とは別の項目として、中身がわかるようにしておくと安心です。
また、シーリングの上から塗装する仕様では、塗料との組み合わせにも気を配る必要があります。
次のバリアプライマーは、シーリングの上に塗装するための処理の例です。詰める前にくっつける面へ塗るプライマーとは、目的が違います。

外壁のシーリング部分に刷毛でバリアプライマーを塗る様子(静岡市葵区 Sハイツ)
残す塗膜に合う下塗りを選ぶ
必要な下地の補修と、残す古い塗膜や壁の材料の状態をふまえて、下塗りと仕上げの塗料の組み合わせを計画します。
汚れや浮いた塗膜を取り除き、しっかり乾かすのは、新しい塗膜がくっつく面をつくるためです。
下塗り材には、くっつきを助けたり、下地が塗料を吸い込みすぎないよう調整したりする役目があります。必要な処理は、壁の状態と製品の仕様で変わります。
乾いたスポンジに水がどんどん吸われてしまうように、吸い込みの強い壁では、この調整が欠かせません。

外壁の下塗り(静岡市葵区 アパートM)
洗浄や古い塗膜を取り除く方法は、汚れの種類、塗膜の種類や傷み具合、下地の水の吸いやすさ、まわりへの飛び散り対策などをふまえて選びます。
具体的な考え方は、住宅リフォーム・紛争処理支援センターの補修方法シート「外壁の塗料の塗替え(コンクリート系下地)」にも示されています。
ただし、この資料の工法の例を、どの壁にもそのまま当てはめるわけではありません。下地の補修と古い塗膜の処理、残す面との相性を、現地で一つずつ確かめていきます。
色を決める前に、塗る面と直す部分を分けておくと、見積もりの説明が具体的になります。
傷んだ下地を残したまま、塗料のグレードだけを上げることはおすすめしません。
屋上やベランダは防水の範囲を確認
外壁を塗り替えるときに屋上もあわせて調べると、外壁とは違う工事が必要だとわかることがあります。
表面を守る仕上げ、水を通さない防水層、それを支える下地。それぞれの役目と状態を、分けて見ていく必要があります。
保護仕上げの更新と防水補修の違い
防水層がしっかりしていて、その上の保護の塗装を新しくする段階なら、今の防水の仕様に合う保護材で塗り替える方法を考えます。
一方、防水層そのものに破れやつなぎ目の不具合がある場合は、表面の色を塗り直すだけでは対処できません。
傘の生地に穴があいていれば、表面に撥水スプレーをかけても雨を防げないのと同じです。
どの層が傷んでいるかを調べて、部分的な補修で足りるのか、広い範囲の防水改修が必要なのかを判断します。
たとえばウレタン防水では、液体の材料を塗って防水層をつくります。ただ、その層をつくる工程と、上に保護の仕上げをする工程は別のものです。

ウレタン防水2層目の施工後(静岡市葵区 Cビル)
今の防水層を残して直す案でも、新しい材料をくっつけたり留めたりできる、傷んでいない部分が残っているかを確かめます。
傷んだ層を無条件に覆ってしまうと、その下の浮きや湿りなどの問題が残ります。残せる範囲を調べる作業は欠かせません。
屋上が塩ビやゴムのシート防水の場合の考え方は、シート防水は塗り替えできるかでお話ししています。
立上りや排水口までつながる防水
屋上では、広い床の面だけでなく、壁ぎわの立ち上がり、設備のまわり、材料のつなぎ目、排水口などのつながりも調べます。
床の面がきれいでも、端やつなぎ目にすき間があれば、そこから水が入るおそれがあるからです。
次の二枚は、Cビルで傷んだシーリングを取り除き、新しく施工した例です。
屋上に限った場所の写真ではありませんが、つなぎ目の材料を入れ替えて直す作業の流れがわかります。

劣化したシーリング材の撤去(静岡市葵区 Cビル)

シーリング施工後(静岡市葵区 Cビル)
排水口のまわりでは、表面のごみだけでなく、防水層とのつながりや、水が集まる場所の状態も確かめます。
水漏れしている場合は、まず室内の濡れ方と、屋外で原因になりそうな場所を照らし合わせます。塗装する範囲とは別に、雨水の入り口を調べる必要があります。
鉄骨造・RC造の建物での調べ方は、鉄骨・RC造の雨漏り修理と原因調査にまとめています。
立ち上がりや排水口、端、つなぎ目といった診断する場所の考え方は、合成高分子ルーフィング工業会の防水層の劣化診断でも確かめられます。シート防水のメーカー団体による資料です。
調査をご依頼いただく際は、雨が降ったときだけ濡れるのか、どの階のどこに染みが出たのかを、わかる範囲で教えてください。
外壁塗装と屋上防水は、同時に計画しても工事の目的と対象が異なります。
「ビル全体の塗り替え」という名前だけで判断せず、どの場所の何を補修・更新する見積もりなのかを確かめましょう。
ビルの外壁と屋上、どこまで直す必要があるか確かめませんか
無料診断では外壁・屋上の状態を調べ、写真と診断書でご報告します。数量と単価が分かる見積書と工程表で、社内のご説明にも使えます。
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ビルの塗り替え費用は数量と工事範囲で比べる
ビルの塗り替え費用は、建物の坪数だけでは計算できません。
外壁を塗る面積に加えて、補修の場所や量、目地の長さ、屋上の防水、足場や利用者を守る仮設などを積み上げて考えます。
面積と補修量を分けた内訳を見る
延べ床面積は各階の床面積を合計したもので、外壁を塗る面積とは別の数字です。
窓の多さや建物の凹凸などによって、同じ延べ床面積でも、塗る外壁の面積は変わります。
底の広さが同じ箱でも、細長い箱と四角い箱とでは、側面の広さが違うのと似ています。
塗る面積は、現地や図面で確かめます。そのうえで、塗料と工程、下地補修、目地、鉄の部分、防水などを、別々の項目として示してもらうと比べやすくなります。
大切なのは、工事の中身と、それに対応する数量がわかる見積書です。
そうした見積書があれば、金額の高い安いだけでなく、補修の範囲が広いのか、材料や仮設の条件が違うのかまで比べられます。
| 主な工事項目 | 数量や範囲の見方 | 価格差につながる条件 |
|---|---|---|
| 外壁の塗装 | 施工面積、塗る面、使用材料と工程 | 残す塗膜の処理、下塗り、仕上げ仕様 |
| 下地の補修 | ひび・浮き・欠損の位置と補修量 | 除去の範囲、内部の状態、補修方法 |
| シーリング | 対象部位、目地延長、施工方法 | 既存材の撤去や接着面の処理 |
| 鉄部などの付帯部 | 部位、面積や数量、塗る範囲 | 錆や旧塗膜の処理、修理の有無 |
| 屋上・ベランダ | 床面、立上り、端部や排水部 | 保護塗装か防水改修か、下地の状態 |
| 仮設・養生 | 足場範囲、通路、設置期間 | 作業区画、搬入条件、設備への配慮 |
たとえば、外壁の塗る面積が同じ二つの案があるとします。一方には傷んだ目地の撤去と詰め直しが入っていて、もう一方には入っていません。
この場合、総額の差は塗装の単価だけでは説明できません。
目地の工事を足した場合の総額と工事範囲をそろえてから比べれば、必要な工事が抜けたまま「安い」と思い込むことを避けられます。
社内で複数社の見積もりを比べる場合も、当社は相見積もりを歓迎しています。
また、ベランダの床の下地調整は、外壁の塗装とは別の作業です。

ベランダ床の下地調整(静岡市葵区 Kビル)
床の面積だけでなく、端や立ち上がり、今の仕上げの処理をどこまで含むかによって、防水工事の費用は変わります。
材料名と塗り重ねの工程を読む
外壁塗装の値段を比べるときは、「シリコン」「無機」といった塗料の種類の名前に加えて、製品名と、下塗りから仕上げまでの仕様も見ておきます。
同じ種類の塗料でも、今の下地に必要な処理や下塗り材が違えば、工事の中身は同じになりません。
中塗りと上塗りは、どちらも仕上げの塗料を重ねる工程で、上塗りが最後の仕上げです。
この工程では、材料ごとの使う量と、塗り重ねるまでの間隔を守って塗膜をつくります。

外壁の中塗り(静岡市葵区 アパートM)

シリコンによる上塗り(静岡市葵区 アパートM)
上の二枚は、同じアパートMで、外壁を中塗りし、上塗りで仕上げた工程の例です。
工期を縮めるために必要な乾燥を省けば、仕上がりやくっつき具合などに影響するおそれがあります。そのため、工程に必要な日数も含めて計画します。
見積もりの説明を受けるときは、使う下塗り材、仕上げの塗料、塗る回数を聞いておきます。あわせて、現地のどんな状態に合わせて選んだ仕様なのかを聞くと、提案の筋道がよくわかります。
ちなみにアップリメイクの外壁塗装は、下塗り2回・上塗り2回の合計4回塗りが標準です(一部のプラン・仕様により異なります)。
税込みの総額、保証があるかどうかとその対象、見積もりに入っていない作業も、契約の前に押さえておきたい項目です。
足場と追加工事の条件を決める
足場などの仮設の費用は、外壁の面積だけでなく、高さ、まわりの空き具合、材料を運び込む道筋、設置する期間などで変わります。
お隣の建物との間がせまい場所や、人の出入りが多い正面では、職人の足場だけでは足りません。利用者の通り道や、物の落下・塗料の飛び散りへの対策も必要です。
外壁と屋上の工事を同時に行う案では、仮設を一緒に使える範囲を調べたうえで、別々に行う案と比べます。
ただし、仮設を一緒に使えても、まだ必要のない防水改修まで加えれば、今回の出費は増えます。それぞれの場所の工事が本当に必要かを、先に見極めておきましょう。
足場設置後に分かる傷みへの対応
地上からの調査ではわかりにくい高い所や、古い仕上げを取り除いた内側などは、工事を進める中で直す範囲が変わることがあります。
そうした部分は、契約前に調べられた範囲と、まだ確かめていない範囲を分けておきます。追加工事が出たときの説明のしかたも、先に決めておけば、あとで慌てずに済みます。
追加の提案を受けたら、場所がわかる写真、見つかった状態、必要な作業と量、金額、日程への影響を確かめてください。
社内で承認が必要な場合は、誰が説明を受け、どの段階で発注を決めるのかも、前もって共有しておきます。
急いで安全を確保しなければならないときの連絡先も決めておけば、ふだんの追加工事の承認待ちと、安全のための対応を混同せずに済みます。
見積もりは、建物の写真や補修の場所と一緒に読むと、費用の理由が伝わりやすくなります。
社内でご説明いただく際も、何を直すための予算なのかがわかる資料を用意しておくと、話が通りやすいと思います。
ビルの塗り替え時期は修繕歴と今の症状から考える
ビルの塗り替え時期に、すべての建物に共通する決まった年数はありません。
前回の塗装の仕様や修繕の歴史と、今の傷み方を照らし合わせて、調査を急ぐ場所と、計画的に工事できる場所を分けていきます。
前回の工事記録を点検に生かす
前回の見積書や施工報告書は、塗った面、使った材料、直した目地やひびの場所を知る手がかりです。お手元にあれば、次の点検でも役に立ちます。
同じ場所にまたひびが出たのか、前回の工事の対象外だった面に傷みが出たのか。それによって、次の調査で注目すべき部分が変わります。
昔の写真と比べるときは、場所がわかる全体の写真と、傷みがわかる近くの写真を組み合わせると、変化を追いやすくなります。
ただし、オーナー様や管理のご担当者様が、高い所に上ったり、浮いた部分をたたいたりして確かめる必要はありません。危険ですので、そこは私たちにお任せください。
地上や、ふだん使っている安全な場所から気づいた変化を記録して、専門の調査につなげていただければ十分です。
役に立つのは、築年数だけでなく、どの面にどんな変化が出ているかという情報です。
日の当たり方や雨の当たり方、これまでの補修の中身は、面ごとに違います。建物全体を、ひとまとめに同じ傷み方として扱わないことがポイントです。
予定の年まで待たず調べる症状
雨漏りや、外壁がはがれ落ちる心配のある症状がある場合は、全面塗装の予定の時期を待たずに、原因や安全にかかわる範囲の調査を先に進めます。
調査を急ぐことと、すぐに建物全体を塗り替えることは、別の話です。
必要な補修を先に行い、広い面の塗装は次の計画に組み込める場合もあります。急ぎ具合と工事の範囲は、分けて説明してもらうと安心です。
反対に、同じ足場を使って直す場所がいくつもあるなら、今回まとめて行う案が合うかどうかを検討します。
ご担当者様が替わっても、計画を引き継げるようにしておくことも大切です。
予算を決める段階で、今回行う部分、調査を続ける部分、次回に回す部分と、その理由を資料に残しておけば、後任の方も迷わずに済みます。
工事費を修繕費として処理するか、資本的支出として減価償却するかも、予算にかかわる点です。減価償却とは、費用を使える年数に分けて少しずつ経費にすることです。
考え方は外壁の塗り替えは修繕費か減価償却かで整理していますが、最終的な判断は税理士や税務署にご確認ください。
修繕の予定の年は、点検の結果をふまえて見直していくものです。
症状が出た場所を先に調べ、必要な補修と全面塗装の時期を分けて考えましょう。
テナント営業中の塗り替えは段取りを合わせる
テナントの皆様へのご説明も含め、ご担当者様が気をもむ場面は多いと思います。
営業中のビルでも、作業する区画や時間帯を調整して、工事を進められる場合があります。
ただし、すべての出入口や設備を、工事中ずっと使えるとは考えないでください。どの工程で、どこに影響が出るのか。事前に施工会社に確かめておくことが大切です。
通行と搬入の経路を確保する
足場の運び込みや組み立て、外壁の補修、塗装では、それぞれ人や材料が使う場所が変わります。
ふだんの出入口を使い続けるなら、工事の区画とお客様の通り道を分けて、安全に通れる幅や位置を確保する計画が欠かせません。
たとえば、午前中に商品の搬入が集中するお店があるとします。材料の運び込みと配送車の到着が重なると、通るのも荷物を下ろすのも難しくなりかねません。
管理側からふだんの搬入時間と車の大きさを伝え、施工会社と材料の置き場や運び込む時間帯を調整しておけば、当日の行き違いを減らせます。
代わりの入口を使う計画では、利用者にわかる案内を出し、避難の通り道や毎日の移動のじゃまにならないかも確かめる必要があります。
テナントがいくつもある場合は、お店ごとの連絡だけでは足りないこともあります。共用の通路や階段の使用予定を、管理側で全体としてつかんでおくと調整がしやすくなります。
音・臭気と設備使用を工程表に入れる
音が出やすい足場の作業や下地処理、洗浄の水しぶき、塗装のときのにおいなどは、工程によって出る時間が違います。
工事の期間をまとめて知らせるだけでなく、影響の出る作業と場所がわかる工程表を用意すると、各テナントが仕事の予定を調整しやすくなります。
給気口・排気口や室外機などの養生(ようじょう:ビニールなどで覆って守ること)も、設備を安全に使う条件にかかわる作業です。
動かしたまま覆ってよいと自己判断せず、工事側と管理側で、設備の位置、使う予定、必要な対応を打ち合わせます。
材料の選び方や養生の方法で、影響を抑える工夫はできます。ただ、「水性塗料なら無臭」「養生をすれば必ずふだんどおり営業できる」という単純な話ではありません。
休業や設備を止める可能性がある場合は、契約前の段階から相談して、できる方法と、費用・工期への影響を確かめてください。
| 事前に共有する情報 | 工事計画で決めること |
|---|---|
| 営業時間・来客の集中時間 | 作業する面や区画、時間帯 |
| 配送・荷下ろしの予定 | 資材搬入と車両動線、置き場 |
| 給排気口・室外機などの位置 | 養生と設備使用の条件 |
| 普段の出入口・階段・共用通路 | 安全な通行経路と案内方法 |
| 管理側・各テナントの連絡先 | 予定変更や緊急時の連絡順序 |
天候による変更も知らせる仕組みに
塗装や防水には、材料ごとに、工事できる気温・湿度や、塗り重ねるまでの間隔などの条件があります。
雨が降ったり、下地に湿りが残ったりすると、予定を変えることがあります。作業日だけでなく、養生や乾燥にともなう使用の制限も、工程表で確かめておきたいところです。
日程が変わったときに、どの作業が延び、出入口や設備の制限がいつまで続くのか。それを管理側から各利用者へ知らせる流れも、決めておきます。
工事のあとに残す記録は、次の点検やご相談に使える資料になります。工事範囲や使った材料、補修の写真、保証がある場合の条件などです。
アップリメイクでは、写真と診断書で建物の状態をお伝えし、工事の中身ごとに数量と単価がわかる見積書をお出ししています。
工事が始まる前には職人と現場で打ち合わせを行い、工程表をお渡ししたうえで着工します。近隣の方へのごあいさつも、着工前に済ませます。
工事のあとには工事写真報告書をお渡ししていますので、次の点検や社内の記録にもお使いいただけます。
法人様の場合は、プラン・予算のご提案に加えて、社内向けのご説明(プレゼン)に向けたお打ち合わせにも対応しています。
工程表には、作業する日だけでなく、使えない場所と、また使えるようになる条件も入れておくと安心です。
予定が変わったときに誰から連絡するかまで、決めておきましょう。
ビルの塗り替えでよくある質問
オーナー様や管理のご担当者様が検討を進めやすいよう、工事の範囲と費用、営業中の対応についての疑問をまとめました。
Q1. 築年数だけで時期は決まりますか?
A. 築年数だけでは決まりません。前回の仕様、修繕の歴史、今の塗膜や下地の状態から判断します。
水漏れやはがれ落ちが心配な症状は、予定の塗り替えの年まで待たずに、調査と必要な対応を先にご相談ください。
Q2. 坪数が同じなら費用も同じですか?
A. 延べ床面積と外壁を塗る面積は、別のものです。窓や凹凸、補修の量、足場の条件によって費用は変わります。
見積もりを比べるときは、塗る面積に加えて、目地や下地の補修、防水、仮設の範囲をそろえておくと、違いがはっきりします。
Q3. テナントは休業しなくて済みますか?
A. 作業の区画や時間帯を調整して、営業を続けられる場合があります。ただ、出入口や設備、工事の中身によっては、使える範囲の制限が必要です。
営業時間と、搬入・設備の使用予定を伝えていただければ、一時的な休業や停止が必要な工程があるかを、事前に打ち合わせます。
Q4. 外壁と屋上は同時に直すべきですか?
A. 両方に工事の必要があり、仮設を一緒に使える場合は、同時に工事する案を検討する価値があります。
それぞれの場所の状態を調べたうえで、今回まとめる案と時期を分ける案を、比べてみてください。
Q5. 雨漏りも外壁塗装で直りますか?
A. 防水層の破れやつなぎ目の不具合などは、外壁に塗料を塗るだけでは直せません。
水の入り口と通り道を調べたうえで補修や防水改修を選び、必要な場合は、その後の保護として塗装も計画します。
建物の状態と利用条件から工事を選ぶ
ビルの塗り替えで最初に確かめたいのは、構造の呼び名だけでなく、実際に塗る面の仕上げと下地、目地や防水の状態です。
必要な工事の範囲と数量、テナントが使う場所や時間が分かると、費用と日程を具体的に比べられます。
予算を調整するときも、まず必要な補修をつかみ、今回行う範囲と、これからの計画を切り分けておくと、判断がしやすくなります。
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